こんにちは。
読書好き主婦ちみるです。
今回ご紹介する本は高瀬隼子さんの『いい子のあくび』です。
芥川賞受賞作品で、
「いい子のあくび」を含む、3つの短編作品が収められています。
こんな人におすすめ!
①社会に順応しながらも内心では違和感を抱いている方
②人の内面の葛藤や、複雑な感情に興味がある方
③芥川賞受賞作品や文学に興味がある方
表題作「いい子のあくび」では、
主人公の直子さんは、公私ともに「いい子」を演じています。
歩きスマホをしている人たちを避けながら、割に合わなさから生じる様々な違和感。
それらの理不尽さや、直子さんの繊細な感情に共感を覚えました。
人間の複雑さや、社会的なテーマに深く切り込んでおり、短編ながらも深いメッセージが伝わってきました。
この作品は、他人の行動が自分や周囲に与える影響を考えさせられるメッセージが込められいますし、また、社会のルールを考える機会を与えてくれます。
著者の独特な視点や主人公たちの心の揺れ動きがリアルに描かれており、著者の描写力にも感銘を受けました。
表題作「いい子のあくび」は、現代の社会問題を静かに描いた作品であり、私たち読者の心に深い共鳴をもたらすと思います。
では、あらすじと感想をご紹介していきます。
ぜひ最後までお楽しみください!
『いい子のあくび』あらすじ
芥川賞受賞第一作。
公私共にわたしは「いい子」。人よりもすこし先に気づくタイプ。わざとやってるんじゃなくて、いいことも、にこにこしちゃうのも、しちゃうから、しちゃうだけ。でも、歩きスマホをしてぶつかってくる人をよけてあげ続けるのは、なぜいつもわたしだけ?「割りに合わなさ」を訴える女性を描いた表題作(「いい子のあくび」)。郷里の友人が結婚することになったので式に出て欲しいという。祝福したい気持ちは本当だけど、わたしは結婚式が嫌いだ。バージンロードを父親の腕に手を添えて歩き、その先に待つ新郎に引き渡される新婦の姿を見て「物」みたいだと思ったから。「じんしんばいばい」と感じたから。友人には欠席の真意を伝えられずにいて……結婚の形式、幸せとは何かを問う(「末永い幸せ」)ほか、社会に適応しつつも、常に違和感を抱えて生きる人たちへ贈る全3話。
【著者略歴】
高瀬 隼子(著)
高瀬隼子(たかせ・じゅんこ)
1988年愛媛県生まれ。東京都在住。立命館大学文学部卒業。「犬のかたちをしているもの」で第43回すばる文学賞を受賞。2021年『水たまりで息をする』で第165回芥川賞候補に。2022年『おいしいごはんが食べられますように』で第167回芥川賞を受賞。
『いい子のあくび』
集英社
Amazon商品ページより
『いい子のあくび』感想
表題作の「いい子のあくび」では、「いい子」を演じる主人公の内なる葛藤と、人間関係の描写が特徴です。
特に、直子さん(主人公)が、歩きスマホをする人たちを避け続けねければならないという理不尽さや、割に合わなさを感じる姿勢が描かれています。
私は歩きスマホによるルール違反がもたらす理不尽さに共感しました。
自身も道を調べたり、メールの返信をしたりと、歩きスマホ中に周囲に迷惑をかけてしまった経験があり、反省しています。
この作品を読むことで、周囲の人々に対して、謝罪と感謝の気持ちを持つことができました。
歩きスマホをする人たちによるルール違反の無神経さや、主人公が内なる感情を爆発させるシーンは、著者の描写力に感銘を受けました。
心に訴えかけるものを受け止めたという気持ちです。
3つ目のお話である「末永い幸せ」では、結婚の形式や幸せの定義について問いかけられます。
主人公が結婚式を嫌う理由にも納得しました。
一般的には喜ばしいイベントである結婚式ですが、主人公は矛盾した心情を抱いていました。
彼女は花嫁の扱い方に不満を持ち、幸せを祝福する言葉への捉え方も変わっていました。その中で、共感できるところもあり興味深かったです。
しかし、友人を祝福する気持ちは純粋に持ち合わせていて、不思議な行動をとられていました。彼女なりの祝福の形なのかな?と思いました。
このお話を通じて、人間の繊細な感情や、社会のルールについて考えさせられる機会を得られました。
主人公の内心の発言は非常に攻撃的で、笑ってしまうほど過激でしたが、それがまた面白い要素だと感じました。
私にとってこの作品は革新的で大きな衝撃を受けました。
私自身、歩きスマホに関するルールをよく考えるようになりましたし、また人間の心の複雑さについても考える機会が得られたことにとても満足しています。
この作品は、人間の内面と社会のルールについて深く考えさせられます。
ぜひおすすめしたい一冊ですね。
『いい子のあくび』まとめ
この本で得られたこと
①社会のルールに疑問や違和感を抱きながらも、それを受け入れつつ自己を守る方法を模索すること
②スマホのマナーについて考える機会を得ること。
③人間の複雑さを考えさせられること。
④主人公の考え方に共感し、自身の行動について改めるきっかけを得ること。
『いい子のあくび』は、人間の内面の複雑さを描いた作品であり、心に響くエピソード、考えさせられるテーマが多く含まれています。
この作品を読むことで、日常生活や人間関係における些細なことにも気づき、それがどのような影響を与えるのかと考えるきっかけを得ました。
また、自身の心の中にある複雑な感情や疑問に向き合い、解決するためのヒントをみつけることもできるかもしれません。
『いい子のあくび』は、人間の心に寄り添い、私たち読者に新たな気づきを与えてくれる作品です。
ぜひお読みいただき、その魅力を実感してください!
おすすめします。
高瀬 隼子さんのプロフィール
高瀬隼子(たかせ・じゅんこ)
一九八八年愛媛県生まれ。東京都在住。立命館大学文学部卒業。
二〇一九年「犬のかたちをしているもの」で第四三回すばる文学賞を受賞。
二〇二二年「おいしいごはんが食べられますように」で第一六七回芥川賞を受賞。著書に『犬のかたちをしているもの』(単行本/文庫)、『水たまりで息をする』、『おいしいごはんが食べられますように』がある。
高瀬 隼子(著)
『いい子のあくび』
集英社より
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高瀬 隼子さんの作品
著者の作品は、人間の複雑な心情や葛藤が、
繊細に描かれているものが多いです。
ここでは各作品のあらすじや、商品のリンクを提供していきます。
高瀬 隼子(著)『犬のかたちをしているもの』
「おいしいごはんが食べられますように」祝 第167回芥川賞受賞
新芥川賞作家のデビュー作が文庫化!「子ども、もらってくれませんか?」彼氏の郁也に呼び出された薫は、その隣に座る見知らぬ女性からそう言われた。薫とセックスレスだった郁也は、大学時代の同級生に金を払ってセックスしていたという。唐突な提案に戸惑う薫だったが、故郷の家族を喜ばせるために子どもをもらおうかと思案して──。昔飼っていた犬を愛していたように、薫は無条件に人を愛せるのか。第43回すばる文学賞受賞作。
高瀬 隼子(著)
『犬のかたちをしているもの』
集英社
Amazon商品ページより
高瀬 隼子(著)『おいしいごはんが食べられますように』
Amazonオーディオブック対象作品 (会員の方は無料でご利用可能)2023年11月現在第167回芥川賞受賞!
「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」
心をざわつかせる、仕事+食べもの+恋愛小説。職場でそこそこうまくやっている二谷と、皆が守りたくなる存在で料理上手な芦川と、仕事ができてがんばり屋の押尾。
高瀬 隼子(著)
ままならない微妙な人間関係を「食べること」を通して描く傑作。
『おいしいごはんが食べられますように』
講談社
Amazon商品ページより
高瀬 隼子(著)『水たまりで息をする』
第165回芥川賞候補作
ある日、夫が風呂に入らなくなったことに気づいた衣津実。夫は水が臭くて体につくと痒くなると言い、入浴を拒み続ける。彼女はペットボトルの水で体をすすぐように命じるが、そのうち夫は雨が降ると外に出て濡れて帰ってくるように。そんなとき、夫の体臭が職場で話題になっていると義母から聞かされ、「夫婦の問題」だと責められる。夫は退職し、これを機に二人は、夫がこのところ川を求めて足繁く通っていた彼女の郷里に移住する。川で水浴びをするのが夫の日課となった。豪雨の日、河川増水の警報を聞いた衣津実は、夫の姿を探すが――。
高瀬 隼子(著)
『水たまりで息をする』
集英社
Amazon商品ページより
高瀬 隼子(著)『うるさいこの音の全部』
嘘だけど嘘じゃない、作家デビューの舞台裏!
「おいしいごはんが食べられますように」で芥川賞を受賞した高瀬隼子さんが挑む新たなテーマはなんと「作家デビュー」。
ゲームセンターで働く長井朝陽の日常は、「早見有日」のペンネームで書いた小説が文学賞を受賞し出版されてから軋みはじめる。兼業作家であることが職場にバレて周囲の朝陽への接し方が微妙に変化し、それとともに執筆中の小説と現実の境界があいまいになっていき……職場や友人関係における繊細な心の動きを描く筆致がさえわたるサスペンスフルな表題作に、早見有日が芥川賞を受賞してからの顛末を描く「明日、ここは静か」を併録。
高瀬 隼子(著)
『うるさいこの音の全部』
文藝春秋
Amazon商品ページより
ここまで読書好き主婦「ちみるのひとりごと」に
おつきあいいただきありがとうございました。
また素敵な作品を見つけましたらお伝えします。
それではまたお会いしましょう!