今月読んだ本の中から
オススメしたい5冊!
(2025年12月)
①『生殖記』
朝井 リョウ(著)

生殖記
☆2025年本屋大賞ノミネート作品
☆ジャンル 文学・社会
☆装幀 book wall
☆出版社 小学館
☆引き込まれる、共感する、ためになる、ハラハラ・ドキドキ、恋愛要素、応援したくなる、考えさせられる、クスッと笑える、衝撃的、謎解き要素、希望がわく、中毒性あり、心の傷、深い、いじめ、忍耐、現実とリンク、尊敬、何度も読み返したくなる、実践したくなる、意外性、社会問題、友情、刺さる名言、不思議な魅力、斬新、感謝、文学
☆どんな本?
ユニークな語り手の視点を通じて、現代社会における生きづらさや個人の存在意義を深く掘り下げた作品。思わず共感しながら自らの生き方を再考させられるような読書体験を提供してくれる。読後は、自己の理解や他者との関係についての洞察を得られるだろう。社会のあり方や自身のアイデンティティに悩む方、多様性を尊重したいと考えている方には特におすすめ。
(あらすじ)
とある家電メーカー総務部勤務の尚成は、同僚と二個体で新宿の量販店に来ています。
体組成計を買うため――ではなく、寿命を効率よく消費するために。
この本は、そんなヒトのオス個体に宿る◯◯目線の、おそらく誰も読んだことのない文字列の集積です。Amazon商品ページより引用
(主な登場人物の魅力)
○達家 尚成
・主人公
・ 33歳
・オス個体
・ 空気を読む能力が高い
・ 世話焼き個体を見つけるのが得意
・家電メーカー、 3年目に総務部総務課で勤務- 独身寮のマンション七階に居住
・1989年10月1日生まれ
・ 身長174センチ(実際は173センチ)
・大変な日には自分へのご褒美を用意し乗り越える
○柳 大輔
・33歳
・尚成と同期
・決断力があるオス個体
・世話焼きで面倒見が良い
・ 尚成とは十年来の付き合い
・独身寮七階に居住
○岡村 樹
・尚成・大輔と同期入社のメス個体
・頼れる存在
(舞台と世界観)
現代の都市生活を舞台にした物語。
主人公の達家 尚成は、家電メーカーに勤めていて、同僚との関係や自身の内面的な葛藤から、自分は何のために存在しているのか、社会とどのように関わっていくべきか、といったテーマについて考え、模索している様子が描かれている。
ジャンルを超えた深いテーマが取り上げられていて、語り手の正体に、度肝を抜き、それの独特の見方や考え方、新鮮さやユーモアをもたらしている。
人生における重要なテーマや人間関係についての理解を深めたり、思索を促されるような世界観を楽しむことができるだろう。
(この本の魅力)
達家尚成(主人公)が、他者との交流や自分の内面的な思索を通じて、自己理解を深めたり、社会との関わりについて考えたりする過程が描かれ、現代社会における存在意義を探る物語。
物語の語り手が意外なキャラクターで、独特な視点が読者を魅了していく。
このアプローチは本当に新鮮で、ついつい笑ってしまうシーンがたくさんあった。
最初はAudibleで聴いていたため、「尚成、尚成」と何度も繰り返される呼び掛けが癖になり、面白く、いつの間にか親しみを感じるようにもなった。
尚成は家電メーカーに勤務する33歳の男性で、同僚の大輔や樹との関係や彼の内面での葛藤が描かれている。
彼らや周囲の人々が尚成についてどう思っているのか、本音をぜひ知りたかった!想像していた通りかどうか確かめたかった!あなたも読めばそう思うかもしれない。尚成が、会社の日常業務や総務課の仕事に追われる中で、どのように自分を見つめ直していくのかがとても興味深い部分。
彼の人生の意味や自己認識を、多様な考えやユーモアを交えながら楽しむことができる。
さらに、社会の不平等や偏見、生きづらさにも焦点を当て、共感できる部分や心に響く文章、普段何気なく抱えていた感情を上手に言葉にする朝井さんに感心させられた。彼の文章力は本当に素晴らしい!
読後は、人生や他者との関係について深く考えさせられることは間違いない。
読み進めるうちに、尚成の成長や彼に対する共感の気持ちが高まっていくだろう。最後には、読者にも希望を持って次のステップに進む力を与えてくれる。
作品が独自の設定を持ちつつ、人々の感情を具体的かつリアルに表現していて、現代社会における生きづらさや自身を大切にすることを再度考えさせられた。
この作品は単に物語として楽しむだけでなく、わたしたち読者に対して大切なメッセージを伝えていると感じた。
ぜひ手に取り、自分の視野を広げてみてほしい。
読後には、心がスッキリと晴れやかな気持ちになるはず。
(ひとこと)
👧語り手の正体に衝撃を受け、その新しさや独自性に興味を引かれました。
そして、朝井さんの文章表現がやや回り道なものではあると感じましたが、その工夫のおかげか、内容がしっかりと理解でき、物語に夢中になれました。
新しい知識や理解を与えてくれたことで、それは単なる楽しい読書体験を超えたものとなりました。
朝井さんに心から感謝します。
書籍の情報
| 書籍形式 | ページ数/時間 | 発売日/配信日 | ナレーター | 制作 |
|---|---|---|---|---|
| 電子書籍 (Kindle版) | 276ページ | 2024/10/2 | ―― | ―― |
| 単行本 | 290ページ | 2024/10/2 | ―― | ―― |
| オーディオブック (Amazon Audible版) | 8時間52分 | 2025/11/21 | 福圓美里 | Audible Studios |
こちらもオススメ!
朝井リョウさんによる『正欲』です!
現代社会の多様性を掘り下げ、登場人物たちの思いや秘密が交錯する中で、偏見や差別への深い洞察を与えてくれる一作。
社会の多様性や人間関係の複雑さに興味がある方に特におすすめ!
②『断糖のすすめ -高血圧、糖尿病が99%治る新・食習慣 -』
西脇 俊二(著)

断糖のすすめ -高血圧、糖尿病が99%治る新・食習慣 - (頼りになるお医者さんシリーズ)
☆頼りになるお医者さんシリーズ
☆ワニブックス
☆引き込まれる、共感する、ためになる、ハラハラ・ドキドキ、考えさせられる、衝撃的、何度も読み返したくなる
☆どんな本?
糖質が体に及ぼす悪影響を明らかにし、実践的な食事法を通じて健康を取り戻すための具体的な手法を提供している実用書。
高血圧や糖尿病で悩んでいる方や、ダイエットを目指している方に特におすすめ!
(本の概要)
「相棒」「ATARU」など大人気ドラマ医療監修の名医が自ら実践し、3ヵ月で17kg減!自身が院長を務めるクリニックでも取り入れ、高血圧や糖尿病などの患者が続々完治・改善している話題の食事習慣「断糖」をご紹介します。【目次】第1章 現代人にとって、糖は「毒」である第2章 たいていの病気は「断糖」で完治・改善する第3章 3日間で実感! 断糖ダイエット第4章 ボケない断糖の法則第5章 人生を変える「断糖マニュアル」【「断糖」で完治・改善するもの】◎高血圧 ◎糖尿病 ◎動脈硬化◎統合失調症◎パニック障害 ◎肥満 ◎がん◎うつ ◎老化◎不眠症 ◎痛風 ◎手足の冷え など
Amazon商品ページより引用
(感想)
👧糖質が体に悪いということを、この本からより深く理解できました。
以前、私は1日2食、炭水化物を抜き、お昼だけは好きなものを食べるスタイルを続けていました。
この生活は慣れれば、わりと続けることができそうだなと感じました。
しかし、気を緩めて「まぁいいか」と思ってしまう日が一度でもあると、すぐに元の食生活に戻ってしまいました。
頑張って糖質を抜いていた日々は何だったのかと、自分が嫌になったこともありました。
改めて挑戦しようと、この本を手に取りましたが、炭水化物に加え、糖質を含む野菜の制限がとても苦しいと感じました。
私はじゃがいもが、野菜の中で一番好きなのです。
断糖をすると、食べられるものが少なくなり、食事の楽しさは半減してしまいます。
それでも、病気にならず、健康で長生きすることが本当に望みではあるのです。
健康になれる方法を教えてくださっているのに、それを実行できていない自分に反省します。
この甘い考えが、私にとっての一生の課題なのだと痛感しています。
書籍の情報
| 書籍形式 | ページ数/時間 | 発売日/配信日 | ナレーター | 制作 |
|---|---|---|---|---|
| 電子書籍 (Kindle版) | 96ページ | 2014/5/27 | ―― | ―― |
| 単行本(ハード) | 193ページ | 2014/5/27 | ―― | ―― |
| オーディオブック (Amazon Audible版) | 3時間19分 | 2018/10/11 | 粟津 貴嗣 | Audible Studios |
③『謎の香りはパン屋から』
土屋うさぎ(著)

謎の香りはパン屋から
☆「このミステリーがすごい!」大賞受賞作
☆出版社 宝島社
☆ジャンル 連作ミステリー
☆装画 出水ぽすか
☆装幀 菊池祐
☆読みやすい、共感する、心温まる、切ない、応援したくなる、考えさせられる、不快感、頼もしい、クスッと笑える、不安、思いやり、衝撃的、幸福感、謎解き要素、心の傷、満足感、スッキリ爽快、現実とリンク、ワクワク、尊敬、期待、友情、感情移入する、勇気が湧く、美味しそう、青春、恋愛要素あり、引っかかる
☆どんな本? ※作品全体
日常の謎を軽やかに描かれた、全5章+エピローグからなる連作ミステリー。
焼きたてのパンの香りとともに、友情や成長を感じられる心温まる物語が展開。
軽い読みごたえを求める方やパン好きな方に特におすすめの一冊。
(あらすじ)
大学一年生の市倉小春は漫画家を目指しつつ、大阪府豊中市にあるパン屋〈ノスティモ〉でアルバイトをしていた。あるとき、同じパン屋で働いている親友の由貴子に、一緒に行くはずだったライブビューイングをドタキャンされてしまう。誘ってきたのは彼女のほうなのにどうして?
疑問に思った小春は、彼女の行動を振り返り、意外な真相に辿りつく……。パン屋を舞台とした〈日常の謎〉連作ミステリー!
Amazon商品ページより引用
(主な登場人物の魅力)※作品全体
○市倉 小春
・主人公で大学一年生
・一人暮らしの貧乏学生
・ パン屋「ノスティモ」にバイトで働き始めて約1ヶ月
・接客、食レポには自信がない
・実は漫画家を目指している
・観察力が鋭い
○由貴子
・小春に「ゆっこ」と呼ばれている
・ 小春とは高校時代からの付き合いで親友
・小春にパン屋のバイトを紹介
・ショートカットの黒髪
・身長170cmのモデル体型
・ 近寄りがたいクールな雰囲気
・ある舞台俳優の大ファン
・推しについて喋り出すと止まらない
○堂前
・パン屋のオーナー店長
・年齢は40代半ば
・フランスで修行を積んだ
・ パン職人として国内外での受賞経験がある
・スキンヘッドで無精ひげ
・ 大きくて力強い眉
・普段は口数が少ないが、パンの事になると人が変わる
・パンへの愛が重い
○福尾
・ パン屋の女性社員
・健康的な小麦色の肌
・ 関西弁を話す
・余興をよくする
○レナ先輩
・マイペースな性格
・ 大学四年生で小春とは別の大学に通う
・ パン屋に勤務して四年目
・豪快且つ派手な見た目
・売れ残りのパンを遠慮なく持ち帰る大胆な人
(舞台と世界観)※作品全体
舞台は、大阪府豊中市にあるお洒落なパン屋「ノスティモ」だ。
大学生の市倉小春がアルバイトをしているこのパン屋は、個人経営で従業員は少人数。焼きたてのパンやケーキが並ぶ素敵な空間が広がっている。
オープンキッチンなので、お客様との距離も近く、日々の喧騒の中に温かさを感じられる。
物語は小春の視点から、日常の中に潜む小さな謎を解き明かしていく様子が描かれている。
その中で、友達とのやりとりやちょっとしたエピソード、そしてパンの魅力が混ざっていて、読者は心がほっこりする瞬間が味わえる。
日常のカジュアルな謎解きを楽しむことができる、そんな世界観に引き込まれていくだろう。
(この本の魅力)※作品全体
①「日常の中に潜む謎を解き明かす主人公の鋭さが期待を高めてくれるところ」
主人公・小春が、日常生活の中で推理をしている姿がとても身近で魅力的。
ある日、会話の中でふと提示された何気ないクイズに対して、小春が瞬時に正解を導き出す場面があった。
その瞬間、相手は驚き、思わず引いてしまう様子が印象的。
そのようなやり取りがあったため、主人公の卓越した観察力や鋭い洞察が際立ち、今後の小春の推理に対して、読者の期待感が高まっていく。
小春が日常の中で感じた微妙な違和感を解決するために、過去の記憶を振り返るシーンが展開されるとき、彼女が解決に導くだろうという確信を抱くことができ、期待に胸を膨らませながらページをめくる手に、自然と力が入るだろう。
②「巧妙に仕込まれた伏線の魅力に酔いしれてしまう」
伏線がこれほど巧妙に配置されていたとは、後になって気づいたときの感動はすごかった。
あの会話やシーンが実は伏線であったと知ると、著者の卓越した構成力に感銘を受けずにはいられない。
そして、巧妙に織り込まれた暗示が、物語の深みを増し、再読する楽しみを与えてくれる。
このストーリーはとても明解で、かつ高い満足感をもたらす仕上がりとなっていて、その完成度は見事。
また、この作品を読んだ後に得られる満足感はとても心地よく、心の奥に響くものがあった。
③「美味しそうなパンに心奪われる描写がいい」
作品中に登場するパンの描写がとても美味しそうで、香ばしい香りがしっかり伝わってきた。
現在、私は糖質制限に取り組んでいて、わりと意志が強いと自負していたが、ついには誘惑に抗えず、パン屋に駆け込むという事態に至ってしまった…
それだけに、この作品の持つ影響力は計り知れないものだと言えるのだろう。
(ひとこと)※作品全体と第一章のみ
👧この作品は連作ミステリーで、全5章、そしてエピローグで構成されています。
どの物語もパンに関連し、日常生活の中で感じられる微妙な違和感を小春が推理することで、読者に知的な充足感を提供してくれます。
第一章では、女性同士の友情に特有のあるあるのシーンが描かれ、感情移入することができました。
祝福の感情と同時に、切なさが胸に込み上げました。
作品のラストは、思わず笑顔を誘うような見事な締め方で、全体をきれいにまとめ上げていてとても良かったです。
「このミステリーがすごい!」の大賞を受賞される理由に納得しました。
読者を引き込み、思考を刺激する魅力を持っています。
書籍の情報
| 書籍形式 | ページ数/時間 | 発売日/配信日 | ナレーター | 制作 |
|---|---|---|---|---|
| 電子書籍 (Kindle版) | 241ページ | 2025/1/10 | ―― | ―― |
| 単行本(ハード) | 256ページ | 2025/1/10 | ―― | ―― |
| オーディオブック (Amazon Audible版) | 6時間37分 | 2025/11/14 | 川中 彩加 | MediaDo |
➃『ひきこもり家族』
染井 為人(著)

ひきこもり家族
☆ジャンル 長編ミステリー
☆出版社 光文社
☆装幀 泉沢 光雄
☆装画 たけもとあかる
☆読みやすい、社会問題、ハラハラ・ドキドキ、暴力描写あり、考えさせられる、思いやり、衝撃的、引き込まれる、共感する、応援したくなる、不快感、不安、頼もしい、心の傷、スリリング、希望がわく、心の闇、現実とリンク、いじめ、忍耐、恐怖、怒りがわく、意外性、友情、感情移入する、刺さる名言、グロテスク(軽め)、感情が入り交じる、予想できない展開、ほっとする瞬間、混乱
☆どんな本?
引きこもりの人たちとその家族が、過酷な環境で葛藤し、希望と絶望の狭間で成長する姿が描かれた長編ミステリー。
引きこもりという社会問題や家族の絆について考えるきっかけを得ることができ、切実でリアルな人間ドラマに心揺さぶられた。
社会問題をテーマにしたものや、ハラハラドキドキの緊迫感を求めている人には、特にオススメ。
(あらすじ)
不登校となり12歳でひきこもりとなった19歳の僚太。
母親と二人暮らしの大知はブラック企業で働き心を病んで、20年前からひきこもり44歳となった。
双方の家族がすがったのは、新宿にある「リヴァイブ自立支援センター」。
強引に自宅から引き出された二人は、すでにそれぞれのひきこもり人生から無理矢理引き出されていたほかの三人、50代の竹之内、40代の亜弥子、20代の玲とともに、元警察官が営む熊本の研修施設で囚人のような生活を強いられる。
施設長は辺見未知留というプロレスラーのような巨体の大女だ。悪魔のような彼女に監視され、逃げることもできず未来のない辛い日々が続く。
ある日、監獄のような扱いに抗い五人は施設長を殺してしまう。
必死にもがき、社会に怯えるように生きてきた彼らの終わりが始まる。注目の作家が放つ、書き下ろし長編ミステリ。Amazon商品ページより引用
(主な登場人物の魅力)
○平本 僚太
・引きこもり歴7年
・主人公、11月11日生まれ、19歳 、作中で20歳の誕生日を迎える
・身長165cmに満たない
・東京の八王子在住
・アニメキャラクターの声真似が得意
・中学1年の1学期が最後の登校日
・人見知り
・リヴァイブ自立支援センターによる熊本の研修施設へ送られる
・「リョーチン」というあだ名で呼ばれる
○下田 幸子
・72歳 ・埼玉県在住
・夫はすでに他界
・左膝を8年前に打ち付けて手術、古傷に痛みあり
・息子の太一が引きこもり
・息子の大地を「リバイブ自立支援センター」にお願いする
・太一の三つ下(41)の妹・由佳里は、既婚者で子持ち
○下田 大知
・白髪混じりの44歳
・引きこもり歴20年
・正義感が強く親切
・頑固で融通が効かない部分があるが普段は穏やかで優しい
・困っている人に真っ先に手を差し伸べるタイプ
・リーダーシップに長けている
・小学生で学級委員、中学で生徒会長、高校・大学でラグビー部の部長を務めた
・母親に優しく労りの言葉をかける
・リヴァイブ自立支援センターによる熊本の研修施設へ送られる
・「隊長」というあだ名で呼ばれる
(舞台と世界観)
舞台は八王子、埼玉、新宿にある「リヴァイブ自立支援センター」やひきこもりの当事者たちが送られる熊本の研修施設。
引きこもりの当事者たちは、過酷な環境での共同生活を強いられながら、社会復帰を目指す。
だが、実際には監禁のような状況であり、心の傷はさらに深まっていく。
何も知らされていないその家族も同様に、苦しみを抱えている。
人間の多面性や家族の絆、社会の厳しさを浮き彫りにし、読者に考えさせるストーリーが繰り広げられる。
心が揺れ動く感情の渦に引き込まれながら、この作品の独特な世界観を楽しめるだろう。
(この本の魅力)
①「引きこもりとその家族、ふたつの視点が描かれるところ」
この本の魅力は、引きこもりの本人とその家族の視点から物語が描かれているところにある。
引きこもりが抱える思いや苦悩、家族の心配や苦労が丁寧に描写されているため、読者はそれぞれの感情を理解しやすいだろう。
そして、感情移入しやすく、誰にでも起こり得る出来事として共感を呼ぶ。
だからこそ、この作品から得られる知識はとても貴重。
②「読みやすさと社会問題をテーマにしたストーリーにひきこまれるところ」
この本の魅力は、読みやすさと面白さにもある。
難しい言葉があまり使われていないので、ストーリーにすぐに入り込むことができる。
染井さんの作品では、いつもその点を感じることが多いので私好みだ。
そして、社会問題をテーマにしていて、引きこもりや悪質な支援業者による不正など、身近に起こりうる出来事が描かれているので、誰もが最初のページから自然と引き込まれるだろう。
引きこもりの人物たちが突然、通達もなく熊本の研修施設へ連れて行かれる様子は衝撃的だ。
ここまでしなければならないのかと、読んでいる手に力が入る。
外に出るのが苦手な人たちが、親や安全な場所から突然離され、知らない人たちと共同生活や仕事をするのは考えただけで悲惨だ。
契約の時から怪しい雰囲気を感じ、読者は「やめたほうがいいんじゃない?」とハラハラドキドキするだろう。
ここで、これからこの人たちがどのような扱いを受けるのか、もしくはこれが社会復帰への近道なのかと、読み進めるうちに混乱する瞬間が…
キャラクターの背景を知れば知るほど、読者はこの2つの選択肢に振り回されることになるかも。
魅力③「大きな事件が生む緊迫感」
大きな出来事が発生する。
この辺りからは心臓が凍りつくような恐怖と、応援したい気持ちが湧き上がり、ハラハラとドキドキで心臓が忙しくなるはず。
誰もが面白くて、ページをめくる手が止まらないことは間違いないだろう。
冷静に考えると、問題はそのあとのことだ。
この大きな事件の後、キャラクターたちはどう行動していくのか予想がつかない。
そして、この事件を境に、キャラクターたちの引きこもりの理由が明らかになったり、苦悩を共にした仲間意識からか、関係性に変化が…
読者にもほっとする時間を与えてくれるシーンがあり、ほのぼのとした気持ちになれる瞬間もある。
ただし、暴力シーンがあるので、その点は覚悟しておく必要がある。
(ひとこと)
👧施設長のやり方には、多くの疑問を感じさせる部分がありましたが、あるキャラクターがその間違った方法を実体験から少しずつ受け入れてしまう様子は、人間らしい怖さを感じさせました。
結局、施設長も被害者の一人なのかもしれませんね。
また、隊長のお母さんが抱えている心配事は理解できますが、彼女には少し頑固な一面もあると感じました。
娘の助言に反抗する場面もありましたが、ラストでの娘に対するあの行動は立派でした。
やはり、あの隊長のお母さんで、親子は似ているなぁと、感心した瞬間でした。
書籍の情報
| 書籍形式 | ページ数 | 発売日 |
|---|---|---|
| 電子書籍 (Kindle版) | 400ページ | 2025/8/20 |
| 単行本(ソフト) | 380ページ | 2025/8/20 |
こちらもオススメ!
染井為人さんによる『正体』です!
一家を惨殺した少年死刑囚の逃亡劇が描かれた刺激的なミステリーで、彼の真の目的を追うことで、人の深層心理や社会の影を深く考えさせられる一冊。
物語の結末には強烈な印象が残り、実際に起こり得る問題を私たちに問いかけていると感じた。
これは読む価値があり、心の葛藤や社会問題に関心がある人に特におすすめ!
※映像化されています
⑤『ふくふく書房でお夜食を』
砂川雨路(著)

ふくふく書房でお夜食を (小学館文庫)
☆連作短編・グルメ
☆小学館
☆カバーデザイン 小久江 厚(ムシカゴグラフィクス)
☆カバーイラスト ちゃこたた
☆どんな本?
悩みを抱えた人たちが、昼間は本屋、夜は気まぐれで食事処に変わる「ふくふく書房」で、おいしい料理を味わいながら、温かい対話の様子や、ペットに癒される瞬間が描かれている。
この本を読むことで、人と人とのつながりや、食べ物が持つ力の大きさに気づかされた。
疲れた心を癒したい人や、グルメ小説が好きな人に特におすすめの一冊。
(あらすじ)
元料理人の書店主が贈る心あたたまる物語
古びた商店街にある小さな書店「ふくふく書房」。店を切り盛りするのは元料理人の夏郎とその娘の成、そして看板犬のフクコと猫の大福だ。書店の営業時間は夜八時までだが、閉店後ごくごくたまに、店前に灯りがつき食欲をそそるいい香りが漂い始める――。
同棲中の婚約者の浮気現場を目撃してしまった女性に、女手ひとつで育てあげた娘が巣立ち寂しさを覚える母親。
困りごとを抱える人々が訪れるのは、書店兼食事処という夜の小さな休憩場所。寡黙な店主が作る夜食と娘が作るデザートが、疲れた心を癒やし、明日への元気をくれる。心あたたまる感動の物語。
Amazon商品ページより引用
(主な登場人物の魅力)※作品全体
○四藤 成
・21歳
・ふくふく書房 兼 食事処の店員で店主の娘
・ショートボブの若い女性
・色が白く目がくりくりと丸い
・薄くそばかすがある
・愛想がよい
・陽気
○四藤 夏郞
・中年
・ふくふく書房 兼 食事処の店主
・元料理人
・低くて渋い声
・寡黙
○フクコ(メス)
・ふくふく書房の看板犬
・ふさふさと毛の長い雑種
・愛想のいいおばあちゃん
・丸くて茶色の目、茶色の毛
・背中を撫でられると気持ち良さそうにする
○大福(オス)
・ふくふく書房の看板猫
・丸々とふくよかな白猫
・ドスの利いた声で鳴く
(舞台と世界観)※作品全体
舞台は、古びた商店街にある「ふくふく書房」という小さな書店。
昼間は書店として営業し、夜になると気まぐれに食事処としてオープンする。
店内は薄暗いが、オレンジの灯りが心を和ませ、料理の香りが漂う素敵な空間だ。
店主の夏郎とその娘の成が隠れた名店を切り盛りし、看板犬のフクコと猫の大福が癒しの存在となる。
訪れる客はみな悩みを抱えているが、ここでの温かな食事と心温まる会話が彼らの疲れを癒し、新たな一歩を踏み出す力を与えてくれる。
そんな心温まる人間ドラマが展開される中で、この特別な空間の魅力を感じることができるだろう。
(この本の魅力)※作品全体
①「心温まる結末」
この本は全7話からなる連作短編で、日常に疲れた人や悩みを抱える人々が、路地裏にある「ふくふく書房」という昼間は書店、夜は時々開く食事処の美味しい香りに引き寄せられて訪れる様子が描かれている。
彼らはここで元気を取り戻すきっかけを得るのだ。
ストーリーは日常の出来事を基にしていて、時にはショックを受ける展開もある。
そのため、登場人物に感情移入し、自分のことのように胸が苦しくなる瞬間が多い。
しかし後半には、食事処での温かなやりとりが待っていて、心がほっとする結末が…どの主人公も基本的に前向きで、悩みながらも解決策を見つけ出していく。
彼らの姿を見ていると、「こんなふうに立ち直ればいいんだ」と自分自身を見つめ直すきっかけやヒントを得られる。
②「食事処で飼っている犬と猫がもたらす癒し」
疲れきったお客様にとって、動物たちの存在はまるでセラピーのよう。
犬も猫も、人がどんな気持ちでいるのかを不思議と理解し、そばに寄り添ったり、お店に導いてくれたり…
言葉を交わせなくても、動物たちと心が通じ合う感覚は特別だ。
そんな感動的なストーリーが、読者の心に強い感動を与えてくれるだろう。
③「食事処で働く親子の素晴らしい人柄」
店主の夏郎は元料理人で、その腕前は本当に素晴らしい。
提供される料理はどれも美味しく、お客様の心をつかんでいる。
夏郎は少し寡黙だが、お客様の辛い話には親身に耳を傾ける。
美味しい料理と優しい店主の前では、誰もが自然と心を開いてしまう。
一方、娘の成は夏郎とは正反対で、とても陽気な性格だ。
彼女は本の中に登場するデザートを再現し、食事の後に出してくれる。
その明るい性格は、お店に寄りたくなる魅力を放っている。
美味しそうな料理やデザートの数々を想像すると、思わずお腹が鳴るだろう。
悩みを受け止めてくれる親子は幸せそうだが、2人にはそれぞれの背景が…
この作品を読むことで、自分の過去の辛かった出来事や「もうだめだ!」と思った瞬間を振り返ることができる。
その中で、彼らから得たものから、かつての悩みが、今では何とかなっていることに気づくはずだ。
自分だけが大変だと思いがちな時でも、踏ん張る勇気をもらえる心温まる物語がここには詰まっている。
(ひとこと)※作品全体
👧こんなお店が実際にあったら、ぜひ立ち寄ってみたいですね。
偶然通りかかったときに開いていたら、特別な気分になれそうです。
私だけかもしれませんが、料理中にグルメ小説をAudible(音声)で聞くと、いつも以上に料理が楽しくなります。
「作るのが面倒だな~」と思う疲れた日には、まさに救世主です。
ぜひ試してみてください!
書籍の情報
| 書籍形式 | ページ数/時間 | 発売日/配信日 | ナレーター | 制作 |
|---|---|---|---|---|
| 電子書籍 (Kindle版) | ―― | 2025/5/2 | ―― | ―― |
| 文庫本 | 288ページ | 2025/5/2 | ―― | ―― |
| オーディオブック (Amazon Audible版) | 6時間45分 | 2025/10/31 | 斉藤 範子 | Audible Studios |
おわりに


今月は、13冊の本を読み、その中で特に面白かった5冊をご紹介しました。
いかがでしたか?
今月の初読み作家さんは、西脇俊二さん、土屋うさぎさん、砂川雨路さんの3名です。
まずは、西脇俊二さん『断糖のすすめ』です。
体重管理に悩んでいた私にとって、ひじょうに響く内容でした。
糖質に対する意識が一変し、食事のたびにこの本の教えを思い出すようになりました。
最初は音声で聴いて、その後に書籍も購入しました。
今では、家の本棚で私の暴飲暴食を見張ってくれています。
次に、土屋うさぎさんの「謎の香りはパン屋から」です。
こちらもAudibleで知りました。
そして、かわいいイラストと「このミステリーがすごい!」大賞受賞作ということにも惹かれた理由です。
ミステリーというジャンルとの表紙の可愛さのギャップがとても興味深かったです。
受賞作品だけあって、読後の満足感や伏線の回収は素晴らしく、読みやすい文章で楽しむことができました。
今後も期待したい作家さんです。
最後に、砂川雨路さんの「ふくふく書房でお夜食を」です。
こちらもAudibleで出会いました。
温かみのある表紙のイラストが魅力的です。
さらに、グルメ小説で、料理が楽しくなります。
看板犬や看板猫の存在も心温まる要素ですが、一話目からのショッキングな内容にグイッと引き込まれました。
これからも注目したい作家さんです。
次に、私が大好きなお二人、朝井リョウさんと染井為人さんです。
朝井さんの「生殖記」は、本屋大賞にノミネートされた作品です。
購入したものの忙しさから積読状態でしたが、Audibleで配信が始まり、音声版を先に聴くことにしました。
面白く、書籍も併用したことで耳と目から情報を得ることができ、内容への理解が深まりました。
ナレーターさんが素晴らしかったので、何度もリピートして聴きました。
5回は聴いたと思います。
朝井さんには常に新しい視点を与えてもらっていて、これからも目が離せません。
最後に、染井為人さんです。
「ひきこもり家族」をはじめ、彼の作品は、現実とリンクした内容とエンターテイメントが見事に融合しています。特に、社会問題に触れた作品が多く、リアルな描写が読み応えを与えてくれます。
読むことで、さまざまな視点を考えさせられるでしょう。
彼の作品を手に取れば、時間を忘れて没頭することができるはずです。
ぜひ、一度読んでみることをオススメします。
当ブログでは、できるだけたくさんの作品に触れて、面白いと感じた本だけをご紹介していきます。
私が紹介した作品の中から、次に読みたい一冊が見つかればとても嬉しいです!
あなたの新たな読書への旅がこころ豊かなものとなりますように。

本年も「読書好き主婦・ちみるのひとりごと」をご愛読いただき、心から感謝しています。
今年は約160冊の本を読み、その中から特に印象に残った作品をご紹介しました。
2026年も、もっと素晴らしい本に出会えることを楽しみにしています。
これからも、一緒に読書の楽しさを分かち合いながら、素敵な旅を続けていきましょう!
引き続き「読書好き主婦・ちみるのひとりごと」を宜しくお願いいたします。
皆さんに取って、素晴らしい新年が訪れますように!
読書好き主婦「ちみるのひとりごと」 














